AI導入支援を受注して気づいた、「AI導入支援」の曖昧さを整理した話

AI導入支援の案件を受注したとき、提供する側の私自身が「AI導入支援とは何をどこまでやるのか」を説明しきれないことに気づきました。言葉が広すぎて、頼む側も売る側も中身を揃えないまま話が進みがちです。

そこで、支援の形を3つの分岐と6つの型に整理しました。この記事では、その整理の中身と、整理してみて分かったことを紹介します。

背景・課題

同じ看板の下で別々のことをしている4軒の店と、どこに行けばいいか迷う様子の図解

当社はAI導入支援を事業の柱の一つにしており、先日ある企業から実際に案件を受注しました。ところが提案を組み立てようとした段階で、手が止まりました。「AI導入支援としてやれることは何か」を、自分の言葉で一覧にできなかったためです。

調べてみると、世間でも同じ言葉が別々の意味で使われていました。「AI導入支援」を名乗る会社の中身は、研修が主の会社、顧問契約が主の会社、システム開発の納品が主の会社に分かれます。最近よく聞く「AI業務代行」という言葉も、一部の作業を請け負う形から業務を丸ごと引き受ける形まで、指す範囲は提供者によって違います。

この状態では、頼む側は各社の提案を同じ土俵で比較できません。売る側も、自分が提供できる範囲と相手が求めているものを突き合わせられません。まず自分のために、この言葉を分解することにしました。

やったこと

支援の形を、3つの分岐に分解しました。

  • 何を目指すか — 方針を決める/仕組みを作る/人を育てる/業務を回す
  • どう進めるか — 支援側が中心/共同で進める/自社が中心
  • どう続けるか — プロジェクト完結/継続伴走

この組み合わせをもとに、代表的な6つの型を整理しました。

  1. 診断・計画型: 何から始めるべきか分からない会社向け。ヒアリングで業務を棚卸しし、AI化できる業務と導入の順番を提案する
  2. 顧問・相談型: 作るものはまだ決めず、AI活用の判断を定例やチャットで継続的に相談する
  3. スポット構築型: 自動化したい業務が明確な会社向け。仕組みを作って引き渡し、いったん完結する
  4. 伴走開発型: 定例で改善・拡張を続ける。運用の主体はあくまで発注側
  5. 育成型: 社員が自分でAIを使えるようになることが目的。実務を題材に定着まで伴走する
  6. 業務代行型: 設計・構築から日々の実行・改善まで、合意した範囲を支援側が担う

5つの質問をはい・いいえでたどると6つの型のいずれかに行き着く診断フローチャート

世間の呼び名との対応も付けました。この整理では、「AI業務代行」を業務代行型に対応させています。ただし一般には、一部の作業を請け負う形からフルアウトソースまで、指す範囲は提供者によって異なります。「AIセミナー」は育成型の単発の入口です。

海外の大手AI企業では、顧客の現場に入り込んで実装まで一気通貫で担う「FDE(Forward Deployed Engineer)」という役割を採用する動きがあります。この進め方は伴走開発型に近いものです。「AI導入支援」はこれら全体の総称として使われることもあれば、診断や定着支援に限った狭い意味で使われることもあります。

型を分ける決め手は、「出来上がった業務を日々回すのは誰か」の一点でした。診断・構築・教育の作業を支援側がやるのはどの型でも同じなので、そこで線を引こうとすると全部が「代行」に見えます。運用の主体で線を引くと、6つの型がきれいに分かれました。

結果

道具を一度に抱えて相手が戸惑う様子から、6枚のカードを示して相手が選ぶ様子への対比図解

提案の入口が変わりました。「AIで何でもできます」ではなく、「御社の状況はどの型に近いですか」から会話を始められます。相手の答えに応じて、次に確認すべきこと(対象業務は決まっているか、運用は誰がやるか)も絞れます。

整理した後、国内のAI支援サービスを調べて分類の妥当性を確かめました。この6つの型は実在サービスの売られ方とおおむね一致しており、机上の分類ではないことが確認できました。

一方で、FDEのように顧客の現場へ入り込んで実装まで担う立ち位置を明示する中小企業向けサービスは、調べた範囲では見つかりませんでした。整理は差別化の空白を見つける道具にもなります。

つまずきと対処

絡まった矢印に悩む様子から、1本の仕切り線でものがきれいに分かれる様子への転換図解

最初の整理は4つの型でした。そこに「AI業務代行」を当てはめようとして、混乱しました。代行という言葉は診断も構築も教育も含む包括的な概念に見え、どの型にも収まらなかったためです。

前述のとおり、「AI導入の作業を誰がやるか」ではなく「出来上がった業務を回すのは誰か」で線を引くようにして、ようやく整理がつきました。

次に、「何かを作ってほしいわけではなく、継続的に相談だけしたい」という需要が型に無いことに気づきました。市場には相談だけの月額サービスが多数あります。これを顧問・相談型として加え、6つの型になりました。

整理の途中では、別のAIモデルにレビューを依頼して定義を数回作り直しています。たとえば当初はゴールを「社員が自走できる状態」と置いていました。しかし「業務を丸ごと任せたい顧客にとって、そのゴールは選んだ型を否定する説明になる」という指摘を受け、運用主体に依存しない「定着・継続改善」へ改めました。自分で作った分類は自分では疑いにくいため、外部の目を挟む工程は有効でした。

まとめ

山頂へ向かう6本の登山道を、連絡路でつながりながら一緒に登る図解

型は固定ではありません。ヒアリングを進める中で診断から構築へ移行したり、育成とスポット構築のハイブリッドになったりすることも多いはずです。大事なのは「どれが正解か」ではなく、現在地からどの道で登るかを相手と一緒に選べる状態を作ることでした。

頼む側にとっては、自社の状況がどの型に近いかを言葉にできれば、各社の提案を同じ土俵で比較できます。売る側にとっては、自分が提供できる型とできない型を明示することが、そのまま提案の質になります。AI活用の進め方に迷われている場合は、AI導入支援サービスでご相談を承っています。